榊獏山

NHKのリポーターが「この人にトキメキっ」という番組である方に会うために三重の伊賀に足を運んでいた。忍者の子孫でも登場するのかな?と思っていたら書家の榊獏山さんだという。
漫画「美味しんぼ」の海原雄山のモデルでもあり、ドラマのタイトルロゴなどで名前を知ってるくらいだった。
20代で数々の賞を取り若き天才と賞賛されていたが師が亡くなったのを機にすべての書壇を脱退した。「書展の審査員となり出かけると数名の先輩方から肩をたたかれ『うちのを頼むよ』と言われるが自分の票は1票しかないから困ってしまうんだ。」そういったようなしがらみが耐えられなくなり妻に相談したところ、その時幼い子供が2人いたにもかかわらず「私達は橋の下でも生活できますからあなたの気がすむようにしなさい」と後押しされたという。
しかしその後1年は展示会への出品のお呼びはいっさいかからず、収入の道は閉ざされていたらしい。その後待ちの気持ちを切り替え動いた結果環境は好転したという。
 伊賀の広大な自然に囲まれた敷地の中に自分の気持ちを追い立てる意味の「拓庵」と名づけた部屋で創作し、「ぼーっと石」と名づけた石にすわり何も考えず池の水面を眺めている時が至福の時間。
 今までで1番感動した書は大家の書でも、賞を取った書でもなくあるおばあさんの下手くそだが生活がにじみ出てくる書だった、という。賞を取るような書は「上手ですね」でそれ以上のものは感じないそうだ。
 「土」「行」などの書が紹介されていたがとても興味を魅かれた。
自分の髪をばっさり切って作った毛筆は扱いにくく、大体の筆は線が予想できるのだが、自分の髪はさっぱりわからないが、それがかえって予想を超えた面白い書になったりするらしい。
一流と呼ばれる方はその人が辿ってきた人生観などが強く押し出されたりする事が多いが獏山さんの場合、自然体でそういった雰囲気が感じられずリポーターもとてもリラックスしている感じでした。
 日本画家の熊谷守一さんと似た雰囲気があるかな?と思いました。「美味しんぼ」の海原雄山は性格的には魯山人だろうな。